|日々のインデックス (以前の日々)|
■なぜか小田原の夜(11/24)
■シングルモルトと蒸気機関車のスコットランド(10/27)
1月以降につづく
Dec. 2005 12月25日(日)
この48時間くらいは脚が萎えるくらいに書き続けてようやく脱稿。めちゃくちゃ遅れてすみません…。
12月22日(木)
な、だから言ったじゃないかの増税大会。貧乏人ほどなーんも考えんで小泉劇場に投票しやがるからもっと貧乏になる。わしゃ自営業者じゃけぇ知らんもんねー、とはとても言えない。おれはおれに給料を払っているのだが、どうやら所得税、ガツンとあがりそうだ。給料、思いっきり下げるという作戦がなくもないけど。
2択(ぶっ壊すか/否か)に乗せられた阿呆を嗤うのは簡単だが、それ以外の選択肢が見あたらないのも確かだし、あと5年くらい生き延びて、まったく別な展開を考えないと真剣にヤバそう。
12月18日(日)
難渋しっぱなしのリライト原稿、ようやく約200枚ほどあげて、すこし光が差してきたような気がする。ひとつわかってきたことがある。「自分以外はみんなバカ」と思っている著者のリライトは筆が進みやすいんだぁ! (そうじゃなくても書きやすい人もいます。念のため)
Oct. 2005 10月31日(月)
作家・Iさん宅でオーディオについて取材。「中型のベンツ1台分くらいですよ」とさりげなくおっしゃる。確かに高いといえば高いのだけれど、古今東西の著名な演奏家が24時間いつでも来てくれて、自分のためだけに名演を聞かせてくれると考えれば、魔法の道具としてリーズナブルな値段に思えてくる。一日、机に向かって仕事をする作家にとって、想像力の翼をリフレッシュしてどこへでも連れて行ってくれるハイエンドなオーディオ・システムは、Sクラスのベンツよりもずっと実用的。
その音を「3文字以内で述べよ」という設問なら「透明感」が一番正解に近そう。でも、無味乾燥な透明感ではなくて、みずみずしくて清涼な空気を作り出すトランスデューサーという感じ。たぶん今、ピアノに向かって、ピアニストの手が空を切っている、という無音を再現している、と言ったら近いのかも。
以前、1500万のオーディオ・システムというのを試聴したことがあるのだが、これは濃かった。脂っこい雰囲気。ま、これは好みの問題だろうけど、小編成の室内楽とかピアノ曲なら、おれはI先生のシステムに1票。なによりオーディオ・システムのたたずまいが部屋の雰囲気にあっているところが素晴らしい。
2時間ほどの間に、たぶん10分の1くらいの予算で、この音の70〜80%のところまでは到達できるんじゃなかろうか、と悪い虫がうずき出した。いかんいかん。
10月27日(木)
ほぼ1カ月ぶりの更新作業。書籍(短いけど)1点を月曜に上げて、ようやく呼吸が平常に戻った感じ。カレンダー見ると今年もあと60日少々、12月第2週以降は忘年会週だから、実質6週間くらいか。正月は冥土の旅への一里塚めでたくもありめでたくもなし……微かながらも実感する。
先月末にタイから帰って中3日、10月3日からスコットランドへ10日間、商社マンのようなスケジュールで出張。さすがにキツいが、緊張感がいいのだろう、カゼもひかない。考え込む方向で頭を使わないからなぁ。
アイラ島とスペイサイドの蒸留所を訪ねるという願ったりかなったりの好企画。でも件の書籍1点を抱えていたから、そうそう飲んだくれてもいられず、早起きして毎朝2〜3枚ずつでも書いていたのだった(実はタイでもそうしていた)。カメラのHさんは「よく働くねぇ」とあきれ半分感心してくれたが、おれが愚図なだけだと思います。
以下、スコットランド取材のさわりだけ。
・アイラ島への飛行機は1日1往復なので、その時間から逆算してヒースローに午前11時過ぎに集合することになった。というのも編集者は別の取材でスイスから、カメラマンは住居のあるローマから、おれは日本からという現地集合。午前中には着けないので前日入りして空港の近くのホテルに宿泊。てな調子で取材してきた記事、帰国翌日にデザイン出し、その後3日で書いて即入稿、翌日ゲラが出て…、と異様なスピードでさくさく進んで、帰ってから2週間も経っていないのに校了まで終わってしまいました。デジタルの時代はスゴいよ。
・「ロンドンでのホテルは自分で適当にとってください」ということだったので、タイにいる間にネットで予約を入れて買ったのだが、行きの飛行機の中で、プリントアウトしたバウチャーを忘れ、しかもホテル名を忘れていることに気がついて気が遠くなった。よーく考えたらホテル名はPowerBookのメールに入っていたのだが冷や汗が止まらんくらい焦ったぁ。
・グラスゴー空港で、エジンバラ在住のコーディネーターTさんと待ち合わせしてアイラ島へ。36人乗りのプロペラ機で約40分ほどの飛行時間。低高度なので地図のような眺めを楽しみにしていたのだが、厚い雲に覆われてなーんにも見えず。キンタイア半島を越えたとたんに雲が切れたなと思ったらアイラ島に着陸。
・アイラで訪ねたのはボウモアとラフロイグ。かねがね「酒(食べ物もだが)は現地で飲むのがいちばんうまい」と思っていたが、やっぱりそうだった。クセがあるなんでもんじゃないアイラモルトが素直な感じ。
・磯の香り、というと普通は魚介の混じった海の匂いだが、アイラでは海藻の匂いのする潮風。蒸留所付近ではピートを焚いた煙の匂いが微かに混じって、なるほどねぇと大いにうなずいたのだった。ボウモアにもラフロイグにもある通奏低音を感じたわけで。
・生牡蠣にボウモア18年を垂らして食べるのが宿泊したハーバーインの名物。生牡蠣が6個で£11.5、ボウモア18年がショットで£4.65と決してお安くないですが、それはそれは旨い。今や食い物関係の原稿では手垢にまみれてしまった「至福」というコトバを、それでも持ち出したくなる。生牡蠣と一緒にすすってみなさい。陶然とするから。
photo by R. Hiramatsu
・話は端折って、4日目からスペイサイドへ移動。グラスゴーからレンタカーで北へ約270km、グランピアン山脈の北側になる。古くから上質のモルトの産地として知られており、スペイ川流域を中心に約50の蒸留所が集積している。
・宿泊するクレイゲラヒ(って街の名前ね)にいく途中、アビモアで蒸気機関車のロケハン。その昔、スペイ川に沿って走るこの鉄道で、大麦などの原材料や、できあがったモルトを運んでいたのである。現在はアビモア〜ブルームヒル間、約15キロがボランティアによって運行される保存鉄道として復活している。
・その昔、ここいらは密造酒の梁山泊だった。17世紀、スコットランド議会は、ウイスキーに重税をかけたため、蒸留業者たち首都・エジンバラから遠く離れたこの地に潜んで密造したわけですね。偶然かはたまた神の思し召しか、一帯は大麦の産地であり、良質の水が豊富で、熟成に適した冷涼な気候だった。手近な燃料・ピートで麦芽を乾燥させ、蒸留した酒はシェリー酒の空き樽に隠して保存したんだそうな。しまい込んでうっかり忘れたのか、買い手がつかずに倉庫のかたすみで眠っていたか定かではないが、時を経て、琥珀色の液体へと熟成が進んでいた、というのがモルトウイスキーの濫觴(らんしょう=物事の始まり)らしい。
・で、グレンフィディックのビジターセンターにあった300年ほど前の蒸留器↑。腰の高さほどのサイズ。いかにも農家の納屋にありそうな手作り感にあふれて、異様に気に入ってしまいました。レプリカでもいいから欲しいよ。夏休みの工作で作るかな、と子細に写真を撮ったのだった。
・マッカラン蒸留所、ダフタウン、麦畑(秋景色だが)など取材して、夕食前に軽く1杯と、コーディネーターのTさんが案内してくれたのは、フィディックサイド・インという宿のバー。2人合わせると170歳以上(!)という夫婦が取り仕切る。奥さんのドロシーさんは若いころ軍にいたそうで、軍服姿の写真(ブロマイド風)はえらい美人。ご主人はマッカランで働いていたこともあるそうだが、結婚して辞めたんだそうな。昔話を聞いているうちに、スペイサイド鉄道の線路跡がすぐ近くにあって、今は遊歩道になっていること、トンネルもあることなどがわかり、翌日さっそく撮影にいったのだった。鉄ちゃん雑誌だなぁ。
・鉄ちゃん雑誌の仕上げに、大西洋の入り江、フォートウイリアムまでいって、蒸気機関車ジャコバイト号に乗るという任務まであった。映画のハリーポッターシリーズで魔法学校行きの「ホグワーツ・エクスプレス」として登場した列車で、世界一有名な蒸気機関車といってもいいかも。
・ロンドンからの夜行寝台から降りた乗客が、ホーム反対側のジャコバイト号に乗り込んでいる。鉄道好きの善男善女がカメラを手に嬉々として蒸気機関車と運転士たちを取り巻いている。ええ光景ですな。
photo by R. Hiramatsu
・朝10:20にフォートウイリアムを出発、名所・グレンフィナンの高架橋にさしかかるのは約30分後だった。あいにくの雨ながら、山と湖が交互に車窓に映るハイランドの雰囲気は幻想的。急勾配で動輪が空転するなんて体験を、21世紀になってスコットランドまで来てするとは思わなかった。これはこれでマニアックな話ですね。マレイグに12:25到着。
・走行風景を撮ろうと、前日からロケハンしていたのだがえらい雨でズブ濡れ。この日もロッホサイド駅から少しフォートウイリアム寄りの場所で待ち受けていたのだが、セッティングして構図をキメて待っている間に、みるみる雲が黒くなっていくではないですか。定刻すぎてもジャコバイト号は来ない、結局20分くらい遅れて通過。全員ずぶぬれ。お疲れさまでしたぁ。
ひとつ気になったのが、英国の異様な物価の高さだった。だいたいホテルがバカ高い。宿そのものは小さな町の小さなホテルでも清潔でなかなか具合がよろしかったのだけれども、朝食付きで安くて£40、真ん中で£70、高いところは£100だよ(£1=¥205くらい)。 ヒースローのホテルで食べた異様に不味いナポリタンが£9ぐらい。この国にはアルデンテはない、と断言したね。バンコクのホテルで出てきたナポリタンも裸足で逃げ出すソフトめん状態。 「不味い」と「高い」に因果関係はないが相関関係はある。で、この2つがタッグを組むと絶望的な気分になる。
取材期間中は、美味いもの食べさせていただきました。高かったけど。ちらりとレシートを見ると、ディナーではだいたいひとり£30〜なわけで、そりゃ不味かったら怒るよ。
とはいうものの、これはいったいいかがなものか、というレストランがあったのも事実(@アイラ島)。ウェブで公開するのも何だかなぁと思うので、アイラ島に旅行される人、高くて今イチでがっかりするのが嫌だったらメールで問い合わせるように。こっそり教えるから。
■このページの先頭へ戻る
9月までの日々
最初のページに戻る
ご意見、ご感想、その他 こちらから およせください。
(アドレスの頭のXを削除して送信してください。お手数をかけて恐縮ですがSPAM除けのため)